月別アーカイブ: 2016年5月

Lampalizumab(ランパリズマブ)

昨日は様々な水晶体再建術単焦点レンズ三焦点レンズ脱臼IOL摘出毛様溝固定術)を施行。そして夜は毎年恒例の筑波大眼科教官(准教授もしくは講師)の懇親会に出席しました。レジデントと異なり、教官スタッフは臨床・研究・教育とかなりのストレスが負荷されます。その職に就いたものにしかわからない労をねぎらい、情報交換を行う事が主目的の懇親会です。今回も公では話す事が出来ない話題で盛り上がり、非常に有意義な時間を過ごせました。

本日は萎縮型加齢黄斑変性(dry AMD)の治療について。
加齢黄斑変性の患者数は全世界で推定1億3,500万人(2014年)とされ、米国では50歳以上の人の失明原因のトップです。日本でも急速な高齢化や生活様式の変化などのため、この病気に伴う視力障害者が急増しています。加齢黄斑変性の約90%を占めるドライ型は、病気が進行すると黄斑網膜が加齢とともに萎縮(地図状萎縮)してくるものです。萎縮の進行は遅く、ゆっくりと視力が低下していくのが特徴です。地図状萎縮は時間が経過するほど病変部が拡大していくため、その進行をいかに早期に抑制できるかが鍵となります。現時点で「萎縮型」に対する有用な治療法はありませんが、米国ではいくつかの薬剤の開発が進行中です。ここではFDAに承認されそうな薬剤について。

それはLampalizumab(ランパリズマブ)という抗補体因子D抗体フラグメントで、世界最大手のロシュ社が開発しています。下記抗VEGF薬と同様な硝子体注入薬で、海外臨床試験では18ヶ月で地図状萎縮病変進行を20%抑制する効果が確認されています。

滲出型に地図状萎縮を伴う症例も散見されるため、抗VEGF薬や抗PDGF薬との併用療法なども検討されることになるでしょう。治療の選択肢が増えることは非常に喜ばしい限りであり、数年後を目処に双方の薬剤とも国内認可されることを期待したいですね。

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休日に受講…

今年度より国産CTRの材料費が保険収載されたものの、講習会を受講しないと使用不可とのことにて、本日はその受講のため都内へ。実際にはドイツ製CTRの在庫がたくさんあるのですが…
年間1,000例程度の国内出荷予想とのことなので、年間全白内障手術件数の0.05〜0.1%程度となり、年間1〜2例の自己統計はおよそ正確であることが確認できました。約2時間弱の聴講でしたが、遅刻厳禁・途中退出不可と超厳戒…しかし早々に船を漕いでいる方もちらほらと…これでは全く意味がないのでは…(^^;)。時代的には、web聴講で最後に簡単なマークシート問題、などが最も有効かつ合理的かと強く感じましたね〜。寄り道をもくろんでいた若冲展は超激混みのようなので断念…次はいつ見れることやら…

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フォビスタ(fovista、抗PDGF薬)

今週はレーシック白内障手術水晶体再建術)を施行し、皆さん経過良好でなによりです!

本日は抗PDGF療法について。
滲出型加齢黄斑変性(wet AMD)や糖尿病黄斑浮腫(DME)に代表される眼内血管新生疾患には眼内VEGF(血管内皮増殖因子)の発現増加が大きく関わっていることは周知の事実であり、現在は多くのクリニックで抗VEGF薬(ルセンティス・アイリーア・マクジェン)の硝子体注入が受けられるようになりました。スーパールセンティスとの呼び名もあるRTH258のいう強力な抗VEGF薬の臨床試験も海外では進行中ですが、国内臨床にはもう少し時間がかかりそうです。一方、眼内新生血管の成長にはVEGFのみならず、血管周皮細胞の成長を促すPDGF血小板由来成長因子)も強く関与していることが示唆されています。

抗VEGF療法は非常に有効ですが、稀に無効の症例にも遭遇します。また最初は有効であった症例でさえ、硝子体注入を繰り返していると耐性が生じ、徐々に効きが悪くなってくることがあります。そのような症例に朗報の新薬がフォビスタfovista)というPDGF阻害薬です。まだ開発段階ではありますが、wet AMDに対する海外臨床試験においては、ルセンティスとの併用で高い相乗効果が認められています。早ければ2016年中にFDAに承認される予定であり、FDAで承認されれば日本国内では治験遂行なしで追加承認される可能性もあります!

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