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iPS細胞から網膜神経節細胞

昨日19時、日本発の素晴らしい論文がScientific Reports(Nature Publishing Group)オンライン版で発表されました。
国立成育医療研究センター眼科の研究チームが、ヒトiPS細胞から、神経線維をもつ網膜神経節細胞(視神経細胞)を作製することに、世界で初めて成功したとのこと!
これまで神経線維をもつヒト視神経細胞を培養すること自体が不可能でしたが、論文によるとこのヒト視神経細胞は1~2cmの神経線維を有し、神経としての機能を示す軸索流や電気生理反応が認められたとのことです。
イモリにおける水晶体再生や視神経の一部再生は知られていましたが、ヒト視神経の移植や再生医療の研究はほとんど進んでいませんでした。このヒト視神経細胞を用いることによって、緑内障、視神経炎、遺伝性・外傷性・虚血性視神経症などにおける、病態解明・再生医療・創薬が進むことが期待されます。
真の研究とはこうあるべき、というまさにお手本ですね。しかも日本発!久々に感動を覚える論文です。

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はんなりと

週末に学会出席予定だったため、内眼手術は控えめとし、レーシック緑内障手術を。皆さん非常に経過良好のため、安心して第38回眼科手術学会総会に出席できました。会期中ず〜っと雪がぱらぱらと…やはりこの時期の京都は寒いですね。

興味深いものとして、新眼内レンズに関するセミナーがありました。現状の眼内レンズは移植後何十年も視覚の質を保持できますが、臨床的には問題とならない程度の材質的経年劣化はやはり避けられません。
4月に発売される純国産のこの眼内レンズ(vivinex)は、表面を特殊コーティングすることで材質の経年劣化を大幅に軽減し、後発白内障もほぼ完璧に抑制可能とのことです。
この眼内レンズの研究をスタートしたのは実は10年前とのこと。まさに継続は力なり!

手術学会学会ではコングレスバックが必ず配布されるのですが、今回は餃子型ポーチが付いたバックでした。裏にはutsunomiyagyozaの文字が…主催が獨協医大だからでしょうが…..なぜ京都で開催?

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病診連携

昨日の休診日はいつもの如く午後から出張手術へ。そして夜は「研究学園地区医療懇話会」に参加してきました。前回からもう半年…早過ぎます。
今回は耳鼻咽喉科Drによる「アレルギー性鼻炎」のお話しで、眼科にも密接に関連する内容だったため、非常に興味深く拝聴しました。今年の東日本のスギ花粉飛散量は例年より多いようです。

そして本日は、抗緑内障点眼薬(α2刺激薬)の発売2周年講演会。メインは近視と緑内障のお話しでした。
昔から近視は万病の元とされ、緑内障の危険因子でもあります。強度近親の網膜は薄く、視神経乳頭も傾斜しているため、緑内障の診断が難しい場合があり要注意です。しかし最新のデジタル機器を用いれば、その判定も以前に比較すると大分容易になりました。

病診連携のためとはいえ、今週は講演会だらけでやや疲れ気味…
明日明後日は白内障〜硝子体手術はもちろんのこと、立て続けに緑内障手術も入っています。
頑張ります!

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Preperimetric glaucoma

今日は新規緑内障点眼薬の発売記念講演会に出席するため都内へ。

抗緑内障点眼薬は、作用機序から主に8つに分類されます。
緑内障点眼薬処方されることの少ない古い薬剤も2種あるため、実際には6種類から患者さんに適した薬剤を選択することになります。しかし6種類もの目薬を使用するとアドヒアランスが低下(患者さんの協力が得られにくくなること)するため、現実的ではありません。
そこで…違う薬効の2種類を合わせて、しかも回数が1日1回であれば、アドヒアランス向上が予想されますよね!本日はそんな合剤点眼薬の講演会だったのです。
具体的にはPG関連薬とβ遮断薬の合剤で、これまでも同様の合剤はありましたが、純国産というのが大きな特徴です。

数ある抗緑内障点眼薬のなかでも、Rhoキナーゼ(ROCK)阻害薬は最も新しく、2014年11月に薬価収載されました。世界初の作用機序を有する緑内障・高眼圧症治療薬であり、房水流出の主経路である線維柱帯・シュレム管経路組織のRhoキナーゼを阻害することにより、房水流出を促進することで眼圧を下降させます。まだ未知の部分もある薬ですが、私も治験に参加していた経緯があり、今後どのような位置づけになるか期待しているところです。

講演会でも話題にあがった興味深いものとして、preperimetric glaucoma(PPG)が挙げられます。PPGとは、視神経の緑内障性変化を認めるものの視野異常を認めない状態のものです。緑内障の前駆状態の疑いもありますが、緑内障に類似した所見を示している正常眼の可能性もあり、無投薬にて慎重に経過観察することが一般的です。一方、高眼圧・強度近視・緑内障家族歴などの緑内障発症の危険因子を有している場合や、眼底三次元画像解析装置により異常が検出される場合には、必要最小限の治療を開始した方が良いとも指摘されています。しかし現時点でのPPGに関するエビデンスは非常に希薄であり、その定義や治療方針も定まっていません。眼圧正常な20代のPPG疑い症例に、生涯にわたり継続が必要な緑内障点眼を開始すべきかどうか…非常に難しい選択と言えるでしょう。

ストームグラス発売記念品は「ストームグラス」。形状が目薬のdropに似ているからでしょうか…説明書によると、19世紀に航海士等が使用していた天候予測器。樟脳やエタノール等をガラス管に密封して作られており、気温などの気象変化によって、増えたり減ったり、色んな結晶の形を楽しめるそうです。おしゃれですね〜。

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水晶体囊拡張リング(CTR)

白内障手術では、水晶体囊(袋)を残して濁った中身だけを吸い取り、この囊の中に眼内レンズ(IOL)を挿入します。水晶体はチン小帯(無数の細い糸)にて吊されているので、このチン小帯が弱かったり、一部切れていたりしたら、手術中にどうなるでしょうか?
IOLが挿入できない場合はIOLを直接眼内に縫い付け(縫着)なければなりません。仮にやや無理に挿入できたとしても、IOLが徐々に偏位し、いずれIOLを摘出し結局は二次的に縫着、という場合もあり得ます。
ctr-spec2 ctr-spec1
このような事態を避けることが可能な医療用具が水晶体囊拡張リング(CTR : capsular tension ring)です。一部チン小帯が断裂している症例などで術中にCTRを挿入することにより、手術の安全な遂行が可能となり、IOLの長期的な眼内安定性が保持されることになります。
CTRは20年以上前から本邦でも使用されていますが、これまで国産品がなく、個人輸入にて手に入れるしかありませんでした。韓国製・インド製などの非常に安価なCTRもありますが、ちょっと怪しいので…..私はドイツ製の由緒ある確かな品を入手していました。
IOLと同様に半永久的に眼内に留まる医療用具であるため国内認可のハードルは高いと推定され、製造販売コストが合わないことから複数の企業が過去に断念した経緯がありましたが、2014年7月に国産CTRが初めて認可されるに至っています。

散瞳不良でなおかつ術前から水晶体振盪(水晶体がプルプルと揺れている)が認められるため、IOL縫着となる可能性も高い実例です。
瞳孔拡張 CTR

 

 

 

 

 

この症例は予想通りチン小帯が約90°にわたり断裂していましたが、特殊瞳孔拡張器とCTR併用にて問題なく終了。難症例の紹介患者さんを術翌日に逆紹介することが可能なのは、このような希少医療用具の賜物といえます。

出張手術も多いため、実はいつもCTRを持ち歩いています。実際に使用する機会はほとんどありませんが、備えあれば憂い無し。お守りみたいなものですね(^^)。

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