抗VEGF療法」カテゴリーアーカイブ

単純糖尿病網膜症に対するアイリーアの適応拡大

先々週:硝子体茎離断術(RRD)〜緑内障濾過手術(PEG)〜水晶体再建術(IOL脱臼を含む)〜眼窩腫瘍摘出術(浅在性)〜前後転術(外斜視)〜出張手術(二の宮眼科)
先週:レーシックPTK(帯状角膜変性・アベリノ角膜変性)〜水晶体再建術(EDOF・toricを含むを含む)〜出張手術(笠間眼科)
今週:緑内障インプラント挿入術(PEG・POAG)〜水晶体再建術(EDOFトーリックを含む)〜出張手術(鉾田病院)
皆さん経過良好です!

只今,「股関節治療と職場復帰について」と題しての医師会研修会にて,重要な部分のみ聞き耳を立てつつ内職中…。

本日はアイリーア(Eylea:aflibercept)の適応拡大について。
アイリーアやルセンティスなどの抗VEGF薬は,糖尿病黄斑浮腫(DME)・網膜静脈閉塞症(RVO)での黄斑浮腫・滲出型加齢黄斑変性(AMD)・近視性中心窩脈絡膜新生血管など,中心窩病変を伴う疾病に対して保険診療が認められています。
なかでも頻度の高いDMEは,糖尿病網膜症(DR)が単純性(SDR)から増殖性(PDR)に移行した後・あるいは移行しつつある時に併発することがあります。
米国内の臨床試験にてSDRに対するアイリーアの有用性が証明され,SDRからPDRまで全段階のDRに対するアイリーア硝子体注入が,FDAにて本年5月に承認されました。

DRには汎網膜レーザー光凝固(PRP),DMEには抗VEGF薬,これが基本です。
PRPはSDRからPDRに移行する前増殖性(prePDR)以降において開始され,費用は片眼で約16万円(3割の被保険者なら約5万円の自己負担)ですが,施設を変えない限り支払は通常1回限りです。
アイリーア注入費用は片眼1回で約16万円(ほとんどが薬品代)とほぼ同額ですが,何度も繰り返すことが必須となります。

アイリーアに限らず抗VEGF薬がSDRにも有用であることはその性質上至極当然。
間隔を空けつつも継続投与は必須であり,その費用をどこから捻出するのか…。
米国と異なり,国民皆保険の本邦では税金が投入されることとなります。

抗VEGF薬の薬価は発売当初と比較するとやや減額となっているものの,まだまだ高額です。施行件数も右肩上がりに増加し,保険診療財政を圧迫しています。
早期から抗VEGF薬を開始しPDRへの移行を減らすことにより,結果として総医療費を抑えられれば素晴らしいのですが…..ちょっと現実的ではありません。
本邦もFDAにならって適応拡大となるのでしょうか…?

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メス納め

12月第1週目:レーシックICL挿入術〜硝子体茎離断術(MH)〜水晶体再建術(三焦点・両眼同日を含む)〜眼瞼挙筋短縮術(眼瞼下垂)〜出張手術(笠間眼科)。
第2週目:レーシック硝子体茎離断術(ERM)〜水晶体再建術(三焦点・強膜固定を含む)〜出張手術(鉾田病院)。
第3週目:PTK(帯状角膜変性)〜ICL挿入術〜硝子体茎離断術(PDR・MH)〜水晶体再建術(両眼同日を含む)〜出張手術(笠間眼科)。
第4週目:出張手術(二の宮眼科)。本年はこれにてメス納め。

12/29〜1/3まで休診とさせて頂きます。
来年も引き続きよろしくお願いいたします。

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開院5周年

台風一過の本日、開院5周年を無事迎えることが出来ました!
診察券番号35224を昨日発行し、開院後5年間で3万5千人強の新規患者様にご来院頂きました。受診されたすべての患者様、そしてスタッフに日々感謝です。

これからも引き続き、個別化屈折矯正手技ISEE治療レーシックICLオルソケラトロジー)〜プレミアム白内障手術硝子体手術(MIVS)〜緑内障手術(MIGS)〜眼瞼下垂手術斜視手術抗VEGF療法など、最先端かつ最良のテーラーメイド医療を提供し続けます!

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Brolucizumab(RTH258)

今週は硝子体茎離断術(BRVO硝子体出血)〜水晶体再建術(両眼同日を含む)〜結膜嚢部分形成術を施行し、皆さん経過良好です!

本日はbrolucizumabRTH258)について。
滲出型加齢黄斑変性に対する現在の治療は、抗VEGF阻害薬(aflibercept、ranibizumab、pegaptanib)の硝子体注入であり、その効果はおよそ aflibercept(アイリーア) > ranibizumab(ルセンティス) >>> pegaptanib(マクジェン) の順とされています。
新しいVEGF阻害薬であるbrolucizumab(RTH258、ノバルティス社)は、分子量が小さく(26 kDa)、すべてのVEGF-Aアイソフォームに対し高い親和性と同時に強力な阻害作用を有する、ヒト化一本鎖抗体フラグメントです。

このbrolucizumabは、第III相臨床試験において初めて大半の患者が導入期直後から12週毎投与で継続された抗VEGF薬であり、主要評価項目においてアイリーアに対し非劣性を示したとのこと(以下要点)。
・brolucizumab投与群では、網膜滲出液(網膜内滲出液、網膜下液)は、疾患活動性の徴候を示す患者において有意に少なかった。
・滲出液貯留による中心窩網膜厚において、brolucizumabはアイリーアに比べて有意な網膜厚減少を示した。
・brolucizumabによる眼および眼以外の有害事象の発現率は、アイリーアと同程度であった。

Brolucizumabはスーパールセンティスとも呼ばれており、FDAで承認されれば日本国内では治験遂行なしで承認されるかも? 早期承認が期待されます。

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添付文書

先週は硝子体茎離断術(裂孔原性網膜剥離・増殖糖尿病網膜症)〜水晶体再建術
今週は硝子体茎離断術(裂孔原性網膜剥離・黄斑前膜)〜水晶体再建術
いずれも経過良好です。

今週末は網膜硝子体学会へ出席するため有楽町の国際フォーラムへ。
網膜静脈分枝閉塞症(BRVO)の治療、そして抗VEGF薬硝子体注射の合併症のセッションを興味深く拝聴しました。
BRVOに伴う黄斑浮腫の治療法としての第一選択が抗VEGF薬硝子体注射であることは統一された見解だと思います。しかしこれをいつまで継続するのか……BRIGHTER試験ではレーザー併用の有無は視力予後に影響を与えないとされます。しかし、抗VEGF薬だけでは何年経っても再発を繰り返す人も少なからずいますし、長期的な医療費削減という意味でも局所レーザー併用の手間を惜しむべきではないと考えます。

また、硝子体注射の反復は細菌性眼内炎のリスクを増大させます。最近では、術前点眼も滅菌ドレープもせず、患者にマスクを装着させ、ヨウ素系洗眼殺菌剤を眼瞼内にたっぷりと浸した状態で注射を行う施設もあるようです。要は注射をするまさにその瞬間を無菌状態とすることが重要なので、この方法でもおそらく大丈夫なのでしょう。

会場の質疑応答でも述べられていましたが、問題は添付文書です。
アイリーアの添付文書を例にすると……
・硝子体内注射は、無菌条件下で行うこと.(手術用手指消毒を行い、滅菌手袋、ヨウ素系洗眼殺菌剤、滅菌ドレープ及び滅菌開瞼器等を使用すること.)
・本剤投与前に、十分な麻酔と広域抗菌点眼剤の投与を 行うこと.(広域抗菌点眼剤は本剤投与 3 日前から投与後 3 日まで投与すること.)
と明記されています。

添付文書を無視して何か問題が起きた場合、弁解の余地はないでしょう。
抗菌薬の汎用に伴う耐性菌の増加も問題ですが、添付文書が改訂されるまでは、当院では3日前からの抗菌薬点眼および滅菌ドレープを当面継続したいと思っています。

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